戦略は、目的、目標を達成するためのものであり、戦略オプションは環境変化に耐えうるものであるべき
先日、戦略があって、目的、目標があるのではないか?という説を書きました。
しかしながら、私が戦略論の講義をする際に使った本を読み直してみると、戦略は目的、目標を達成するために立案する、と書いてありました。
この本は、以下です。
戦略とは何か?ストラテジック・マネジメントの実践
コーネリス・A・デ・クルイヴァー、ジョン・A・ピアースII世 著
大柳正子訳
この本はピーター・ドラッカーが推薦文を以下のように書いています。
「戦略とは何か」「なぜ戦略が重要なのか」を世に問うているのは、私の知るかぎり本書をおいてほかにない
この本には、
「戦略とは持続的競争優位性を達成するためのポジショニングを構築することである」という点が、様々な戦略の定義の共通項である、と指摘しています。
したがって、戦略の本質は、ユニークな競争上のポジションを選ぶことにあります。
そして、戦略立案のプロセスでは、
今どこにいるか?
どこへ向かうべきか?
どうやってそこへたどり着くか?
の3点を中心に戦略を立案します。
また、戦略は環境の変化に耐えうるものでなければならず、変化を予測し、突発的に起こる変化や、加速するグローバル競争環境にも折にふれて対応する必要があります。
つまり、とりうる戦略オプションの数が増え、それらを活用する機会が短くなるにつれ、戦略的規律や「コントロール」の重要性が増してくる、と指摘しています。
つまり、変化の激しい今日では、戦略も朝令暮改になる可能性すらあります。
ソニーは5年後、10年後は予測がつかないから5か年計画のような長期計画を立てるのを辞めた、と発表したことがあります。
しかし、戦略オプションを多数準備しておけば、将来、予想外の事態に遭遇しても、戦略オプションを選びなおすことで対応可能になるのではないでしょうか?
そういう意味で、戦略は、将来の環境変化も予想して、それにも耐えうる戦略オプションを立案する必要があります。
戦略と戦術との関係は相対的
戦略の定義は、本の数だけある、といわれるように、人によって定義は様々です。私も士業(弁護士、公認会計士等)に対して知財戦略を講義したりしたこともありますから、専門家です。
戦略の本を読んでも明確な定義をしているものは、本当に理解していなかったりしました。むしろ、戦略の定義はいろいろある、と正直に書いてある本の方が、戦略の本質を理解しているように感じました。
比較的一般的な定義としては、競争優位を獲得する理論、というのがあり、私はそれを教えていました。
最近では、マーケティング戦略とは、価値を生み出し続ける仕組み、という定義もあるようで、戦う策略という視点とは異なる視点で戦略を定義する教授も出てきています。
どんな定義をするにせよ、その定義で理論体系がきちんとまとまり、説明に矛盾が無ければ問題ないでしょう。
逆に、おかしな定義をすると、体系全体が崩れてしまい、各部分に矛盾が出て、使えない戦略論になる可能性もあるので、定義とその理論の整合性は重要と思います。
戦略の定義がいろいろあるように、戦術の定義もそれに応じて変わってきます。
一説には目に見えないものが戦略、目に見えるものが戦術などという人もいます。
また、戦略と戦術は相対的なもので、事業部戦略は、全社戦略から見れば戦術だが、事業部から見れば、戦略、各部門も戦略は事業部から見れば戦術、というように、より大きな部門からみれば、戦略が戦術として捉えられる場合もあります。
そういう意味では、戦略と戦術を厳密に分けて考える必要はなく、より上位概念が戦略、というように考えてもよいのかも知れません。
それから、戦略にはオプションを用意する必要があります。
例えば、戦略Aで相手に勝てると思っていたら、相手が別の経路から攻めてきた、というような場合は、それに対抗できる戦略Bを準備しておかなければなりません。つまり、戦争は常に局面が変化するので、戦略も状況に応じて変化させなければ戦いに負けてしまいます。
ですから、戦略家は、相手の出方を予想して、いくつかの戦略パターンを準備しておき、その時々で最善の戦略を採用します。
そういう意味では、戦争における戦略は常に変化すると考えるべきでしょう。
企業のビジネスにおいても、例えば、低アルコールビールを開発して発表したら、ライバル会社はアルコールゼロの新製品を出してきた、というような場合は、低アルコールビールの発売を中止して、アルコールゼロの新製品開発を優先させるのも戦略変更の例です。
ライバル企業もどんどん新製品を開発していますから、業界の流れがどう変わるかは予想できません。そのために、企業でも製品戦略をいくつも準備しておいて、状況に応じて発売する製品を変更したりもしています。
どの製品をどのタイミングで発売するか?というのも戦略といえるでしょう。
ミッション、理念、ビジョン、目的、目標の位置づけ
企業理念、ミッション、ビジョン、目的、目標は近い概念に見えますが、実際には順序があります。
理念やミッションがまずあって、それを実現した世界がビジョン、目的はミッションに近いですが、目標毎に目的があるので、目的と目標はセットと考えてよいと思われます。
つまり、
理念、ミッション
ビジョン
戦略
目的・目標
という順番ではないかと個人的には思っています。
そして、ビジョンを実現するためには、戦略(strategy)を立てることになります。
この戦略は、例えば、富士山に登る場合なら、どの登山口から登るか?というような選択を言います。戦術は、どんな装備を持っていくか、どこまで車で行って、どこから足で登るか?というあたりでしょう。
企業戦略で言えば、どんな事業ドメインに参入するか?が戦略、その事業をどういう戦術で売り上げを上げていくか?が戦術になります。
最上位概念にその企業の理念、ミッションがあり、その理念、ミッションを実現した理想の未来がビジョン、そのビジョンを達成するために、戦略を立て、戦術を駆使します。
最終ゴール(ビジョン)に加えて、マイルストーン的な意味で(中間的な)目標を設定し、その目標を順次達成していくことでゴールに到達できます。
目標にはそれぞれ目的があって、その目的は、最終的には企業理念、ミッション、ビジョンを実現するものであるべき、と思います。
そして、目的を深く掘るにはbig whyを考えればよいと思います。その目的のより大きな抽象的な理由、世界を変える理由のようなものをbig whyにすることで、目的が強化され、目標に向かって全力を出せるのではないかと思います。
今日からこのブログを始めます
ふと思い立って、はてなブログを始めました。
最近感じたことを中心に書いていこうと思っています。
今日はイチローの終身契約が話題でした。
もう10年前位にシアトルに行ったとき、ビル全面にイチローの姿が映し出されていたことがあり、シアトルでの人気を感じさせられました。
あれから10年以上経ちますが、その間イチローはいくつかの球団を渡り歩き、一時は日本に帰国か?という噂もありましたが、結局ずっとアメリカに永住しそうですね。
ダライラマのような存在ということで、悟りを開いた野球選手、といった感じでしょうか。
それにしても、日本人が米国の球団でフロントに残り、終身契約までオファーされるとは、イチローのすごさが底知れないですね。